第76章 2人の女の醜い争い

物置の扉が開き、関口美子が出てきた。野村香織を見て表情が一瞬曇った。野村香織は意味ありげな笑みを浮かべながら、手を差し出して言った。「そうそう、関口さんは写真の達人でしたね。盗撮の腕前はどうなのかしら?早く見せてもらいましょうか」

関口美子は一瞬表情を固めたが、すぐに取り繕って答えた。「野村さん、冗談でしょう。何の盗撮ですか。私はただ場所を間違えただけで、物置にいただけです」

野村香織の笑顔が徐々に消え、威圧的なオーラを放ち始めた。一瞬にして彼女は大きく見えた。関口美子は顔を引きつらせ、心の中で恐れを感じ始めた。

「関口さん、私たちは品のある人間です。ここで騒ぎを大きくすれば、あなたの立場が悪くなりますよ。賢明な方だと思いますが」野村香織は見下すように言った。

「あなた!」関口美子は言葉に詰まった。

「何よ!あなたみたいな人は懲らしめが必要なのよ。しかも人の話を聞かない。何度も言ったでしょう、私に関わらないでって。でもあなたは耳が聞こえない人みたいに、私の忠告を完全に無視してきた」野村香織は威圧的に言い放った。

関口美子は思わず一歩後ずさり、薄い背中が壁にぶつかった。「野村さん、一体何のお話ですか?私には全く分かりません」

野村香織は冷ややかに笑った。「やっぱり人の話が分からないのね。関口美子、最後に警告するわ。もう二度と私に面倒をかけないで。さもないと後悔することになるわよ」

関口美子は真っ青な顔で、大きな目を見開いたまま、さらに無邪気を装って言った。「野村さん、何か誤解されているんじゃないですか?本当に分かりません!」

「ふん、分かっているか分かっていないか、あなた自身が一番よく知っているでしょう。よく考えなさい」野村香織は冷笑いを浮かべながら手を振り、関口美子とこれ以上話す気はないという様子で、冷たい表情のまま立ち去った。

関口美子は全身を壁に寄りかかったまま、野村香織の威圧感に完全に圧倒されていた。野村香織の後ろ姿を見つめながら、彼女の顔は青白くなったり赤くなったりを繰り返し、しばらくして やっと我に返った。

「あの綺麗な女性は誰?すごく怖そうね」

「へぇ、面白いねぇ。食事中に芝居が見られるなんて。何があったのか分からないけど、いい話のネタになるわ」