第153話 30人分のテイクアウト

天満奈津子の確認を得た後、ウェイターはもう何も言わず、彼女たちに軽く頭を下げてからメニューとオーダー端末を持って個室を出て行った。

野村香織は笑って言った。「ちょうど私の友達がお昼ご飯を食べていないので、後で私たちが食べきれなかったら、全部持ち帰ります。天満さんには本当に申し訳ないです。」

天満奈津子は鼻で冷ややかに笑った。「遠慮する必要はありませんよ。ここの料理はとても美味しいんです。三人で九品も食べきれるはずがないでしょう。持ち帰って友達と一緒に食べればいいわ。あなたたちにとって、こんな機会は滅多にないでしょうから、しっかり味わっておいた方がいいわ。」

野村香織は相変わらず笑顔で言った。「はい、天満さんのご配慮ありがとうございます。友達の分まで、ご馳走様です。」

約15分後、料理が運ばれ始め、すぐにテーブルいっぱいになった。三人は特に何も言わず、それぞれ箸を取って食べ始めた。ただし、野村香織が一番多く食べ、最後まで食べ続けた。一方、天満奈津子と渡辺奈美子は数口食べただけで満腹だと言った。

野村香織は食べ終わってからサービスベルを押すと、ウェイターが入ってきて「何かご用でしょうか?」と尋ねた。

「残った料理を全部お持ち帰りにしていただきたいのと、テーブルにある料理を全て40人分ずつ追加で作って、私の車に運んでいただけますか?これが車のキーです。」野村香織はテーブルいっぱいの料理を指さしながら、車のキーを渡した。

この言葉を聞いて、ウェイターは完全に呆気にとられた。この店で長年働いてきたが、こんな客は初めてだった。信じられない様子で「お客様、確認させていただきますが、本当にこれらの料理を全て40人分ずつ追加で作ってお持ち帰りにされますか?」と尋ねた。

野村香織は笑顔で「申し訳ありません。注文が多くて。でも、できるだけ早く作っていただけると助かります。」と言った。

ウェイターは「はい、はい...」と答えた。

彼女が強く主張するのを見て、ウェイターは仕方なく肩をすくめ、客の要望通りに従うしかなく、車のキーを持って退室した。

野村香織が持ち帰りを頼んでいる間、天満奈津子と渡辺奈美子はゲームで組んでプレイしていた。天満奈津子がゴールドランクを目指していたようで、二人とも野村香織が何をしたのか全く気付いていなかった。