彼女は柴田貴史のプロポーズを受け入れたものの、二人はまだ恋愛関係を公にしたくなかった。結局のところ、一度公になれば、小村明音のキャリアに少なからず影響を与えることになるだろう。そしてあの日のプロポーズの儀式も、信頼できる人々だけを招待したのは、秘密を守るためだった。しかし、最後には問題が起きてしまった。
事情を理解した野村香織は眉をひそめた。「その人が誰か分かる?」
小村明音は答えた。「分からないわ。私は知らないけど、その人の動画があるから、見てみて」
そう言って、彼女は携帯を取り出し、たった10秒の動画を送信した。野村香織は動画を開いて少し見た後、首を振って言った。「私も知らないわ。見たことがない人みたい」
動画の中の人物を見ながら、小村明音はむずむずして、その人を動画から引っ張り出して思い切り殴りたい衝動に駆られた。たまたまあのまとめサイトを見つけなければ、今頃は彼女がトレンド1位になっていただろう。この背後からの一撃は本当に危険だった。
「ふん、絶対に誰かを突き止めてやる。そうでなきゃ許さないわ」小村明音は怒り心頭で言った。
野村香織は軽く笑って「相手が死に物狂いで来たらどうするの?」
小村明音は表情を凍らせた。怒りに任せていて、その点を忘れていた。もし相手がネット上で何も考えずに暴露したら、自分がどうなるか考えると、小村明音は急にしぼんだ風船のように元気をなくした。「じゃあ、どうすればいいの?このまま受け身でやられるの?」
野村香織は携帯をしまい、新しく入れたお茶を一口飲んだ。「そんなわけないでしょう。まずは玲香さんにこの人が誰か調べてもらって、それから対策を考えましょう」
小村明音は少し考えてから頷くしかなかった。このような事態は冷静に対処しなければならない。そうでなければ、対立が激化した場合、相手は数日拘留されるだけだが、彼女はスター生命が終わり、キャリアの再建はほぼ不可能になるだろう。