彼女は柴田貴史のプロポーズを受け入れたものの、二人はまだ恋愛関係を公にしたくなかった。結局のところ、一度公になれば、小村明音のキャリアに少なからず影響を与えることになるだろう。そしてあの日のプロポーズの儀式も、信頼できる人々だけを招待したのは、秘密を守るためだった。しかし、最後には問題が起きてしまった。
事情を理解した野村香織は眉をひそめた。「その人が誰か分かる?」
小村明音は答えた。「分からないわ。私は知らないけど、その人の動画があるから、見てみて」
そう言って、彼女は携帯を取り出し、たった10秒の動画を送信した。野村香織は動画を開いて少し見た後、首を振って言った。「私も知らないわ。見たことがない人みたい」
動画の中の人物を見ながら、小村明音はむずむずして、その人を動画から引っ張り出して思い切り殴りたい衝動に駆られた。たまたまあのまとめサイトを見つけなければ、今頃は彼女がトレンド1位になっていただろう。この背後からの一撃は本当に危険だった。