野村香織は電話に出た。「はい。」
案の定、電話の向こうからホテルの総支配人の声が聞こえた。「野村社長、おはようございます。お休みの邪魔をしてすみません。昨夜の件で少々制御不能な状況になってしまいまして、今朝早くから先方がホテルに押しかけてきて、昨夜のホテルの監視カメラの映像を確認したいと要求し、説明を求めています。」
野村香織は冷静に答えた。「監視カメラを見たいなら、見せてあげればいい。」
この言葉を聞いて、ホテルの総支配人は少し困った様子で「見せること自体は問題ないのですが…」
彼の言葉が終わる前に、野村香織は遮って言った。「大丈夫です。監視カメラは好きなだけ見せてください。一時間後にホテルに行きます。」
そう言って彼女は電話を切り、スマホのおすすめページに表示された盗墓映画を見ながら、非常に名残惜しそうに動画アプリを閉じた。まずは事態を収拾してから、ゆっくり続きを見ることにしよう。