第218章 骨の髄まで美しい

野村香織は笑顔が薄れた。「渡辺社長?」

渡辺大輔は人混みを抜けて彼女の前に来た。「話があるんだ」

離婚してからもうすぐ一年。長い十二ヶ月の絶え間ない接触を経て、今日になってようやく渡辺大輔は野村香織のことを本当に理解した。彼は分かっていた。香織が会いたくないと言うのは、女性によくある口先だけの言葉ではなく、本当に会いたくないということだった。

渡辺大輔は注意深く観察していた。先ほど彼が現れた時、明らかに野村香織の笑顔が消えるのが見えた。高校の同級生たちと別れを告げる時はまだ笑顔だったのに、彼を見た途端、小さな顔が曇ってしまった。

渡辺大輔は分かっていた。野村香織の今の態度からすれば、用件を直接言った方がいい。さもないと、彼女は冷たく「先に失礼します」と言って去ってしまうだろう。