六歳の時、野村香織のおばあさんは孤児院の近くで屋台を開き、通行人に卵焼きを売っていました。当時、卵焼きが流行り始めたばかりで、野村香織の面倒を見るために、よく一緒に屋台を出していました。
ある日、おばあさんは店じまいの時に、わざと野村香織を孤児院の前に置き去りにしました。六歳の子供は怖くて心細くて、ただ泣くことしかできず、結局、孤児院の院長が彼女を引き取りました。
しかし、翌朝早く、裕福な夫婦が孤児院を訪れました。彼らは不妊で、女の子を養子に迎えたいと考えていました。孤児院には七、八人の女の子がいましたが、賢くて素直な野村香織だけが気に入りました。
すぐに新しい家族ができると思っていましたが、その裕福な夫婦と孤児院の院長の会話をおばあさんが盗み聞きしていました。裕福な夫婦の口から「五十万」という数字が出た時、おばあさんは心を動かされました。