第278章 方向を間違える

青木翔が携帯を置く前に、先ほどの見知らぬ番号からまた電話がかかってきた。青木翔はすぐにベッドから飛び起き、怒りの表情で携帯を見つめながら、画面を上にスワイプした。

電話に出るなり、青木翔は怒りを込めて言った。「誰だ?こんな夜中に人を寝かせないのか?!健康食品だろうが、保険だろうが、中古車だろうが、全部いらねぇよ!」

言い終わらないうちに、電話の向こうから渡辺大輔の声が聞こえてきた。「よぉ、随分早く寝るようになったじゃないか。偉くなったな。」

青木翔は一瞬固まった。この声は灰になっても分かる。すぐに態度を変えて言った。「へへ、大輔か。こんな夜遅くに電話してくるなんて、俺のこと恋しくなったのか?」

彼は不思議に思った。なぜ渡辺大輔は自分の携帯を使わずに、見知らぬ番号から電話をかけてきたのか。文句を言おうと思っていなければ、さっきの時点で電源を切っていただろう。

渡辺大輔は無駄話をせずに言った。「城南新町通り991番地の栄光商事まで、車で迎えに来い。」

彼が城南にいると聞いて、青木翔は驚いた。こんな夜遅くにあんな遠くで何をしているのかと聞こうとした矢先、渡辺大輔は電話を切ってしまった。切れた画面を見つめながら、携帯を叩き壊したい衝動に駆られた。夜中に人の眠りを妨げるだけでも迷惑なのに、車で迎えに来いだなんて。新町通りには二回しか行ったことがないが、車で行っても最短で1時間はかかる。往復2時間、まるで市外に出かけるようなものだ。

……

1時間半後、一台の風の子がボロボロの商店の前にゆっくりと停車した。この時間、店はとっくに閉まっていて、渡辺大輔は入り口の小さな木の椅子に座っていた。

彼が無事なのを見て、青木翔はほっと胸をなでおろした。さっき電話で言われた住所は覚えるのが大変だったし、ここに来てからも、この男を見つけるのに30分もかかった。

青木翔は窓を下ろして言った。「おい、こんな夜中に家で寝ないで、ここまで来て都市と田舎の境目の夜景でも見に来たのか?」

渡辺大輔はタバコの吸い殻を弾き飛ばし、彼を一瞥して言った。「夜中だってのに、随分おしゃべりだな。疲れないのか?」