第353章 心の痛みは頭痛より大きい

今や夏川拓海の態度表明により、もう誰も野村香織のことを中傷することはできなくなった。結局のところ、夏川拓海という実業界の大物が、自分の息子が野村香織を追いかけていることを喜んでいるのだから、これは野村香織が非常に優秀な女性であり、名家も争って求める女性であることを十分に物語っている。

もちろん、夏川拓海の言葉は一部の人々を喜ばせたが、一部の人々を憂鬱にもさせた。小島悠里は既に数人の大手マーケティングアカウントに野村香織を中傷する準備をさせていたが、夏川拓海の発言を見て、急いで原稿を全て取り下げさせた。小島家も力があるとはいえ、相手を見極める必要がある。夏川家は小島家が敵に回せる相手ではなく、両家は全く格が違うのだ。

……

嘉星グループ社長室。

秘書の岡山洋子は社長机の前で頭を垂れ、息をするのも凍りつきそうだった。社長椅子に座る渡辺大輔は全身から不気味な寒気を発していた。今朝起きたら、ネット上は彼がパーティーで夏川健志と対立した場面で溢れていた。特に夏川健志が野村香織への好意を認めたことで、渡辺大輔は完全に気分を害していた。