「香織、俺はバカだった。今まで愛とは何か知らなかったし、人を愛する方法も分からなかった。離婚してから、結婚式の日のことをよく思い出す。あの日、お前が言った言葉を今でもはっきり覚えている。人生の後半戦の戦友だと言ったのに、たった3年で、なぜ諦めてしまったんだ?この3年間、お前に辛い思いをさせ、苦労をかけ、心身ともに疲れさせてしまった。だからお前は疲れ果てて、俺から離れることを選んだんだ。でも、それは構わない。俺がお前の元へ歩み寄ることができるから」渡辺大輔は野村香織の前に回り込み、熱い眼差しで彼女を見つめながら言った。
過去のことを思い出し、野村香織も当時の純真で無知な少女のことを思い出した。必死に男性の機嫌を取ろうとし、愛を得ようとしていたが、結局は傷だらけになってしまった。心の古傷が再び開かれ、息苦しくなってきた。今考えると笑えるが、渡辺大輔が自分のことを好きではないと分かっていながら、傷つく可能性が高いと知りながら、それでも自分を男の後半生の戦友だと言い張っていた。