第366章 枕の下の腕時計

「おや、二人とも起きたばかりだね。特別に買ってきた朝食だよ」青木翔は何も聞かなかったふりをして話題を変えた。

「朝食は二人で食べてください。青木様に思い出させてもらったけど、私は朝食を作りに帰らないと」そう言って野村香織は一歩後ろに下がり、ドアを閉めてしまった。

青木翔は朝食を持つ手を少し止め、「バタン」というドアの音を聞いて、野村香織の今日の機嫌があまり良くないことを悟り、渡辺大輔に向かって言った。「どうしたんだ?昨夜はまだ家に入れてもらえたのに、今日は追い出されちゃったの?」

渡辺大輔は彼を睨みつけて言った。「それはお前に対してだよ。私じゃない」

青木翔:「……」

不本意そうにヴィラの玄関を見つめ、自分が道化師のように、熱い顔で人の冷たい尻に貼り付こうとしているような気がした。入れてくれないなら仕方ない。