第387章 まだ決めかねている

野村香織も不思議に思い、そこでまた尋ねた。「私の母を調べているのなら、父のことは?調べたの?」

斎藤雪子は首を振った。「いいえ、重点的に調べているのは伯母さんだけよ。」

野村香織がどんなに頭が良くても、しばらく考えても田中進が何故母を調べているのか分からなかった。しかし、来るものは拒まず、向こうが何を企んでいるにせよ、田中進に本当に何か企みがあるなら、いずれ自分から接触してくるはずだ。その時になれば相手が何をしたいのか分かるだろう。

少し考えてから、野村香織は命じた。「この件は常に注意を払って、何か新しい動きがあったら直ちに私に知らせて。」

斎藤雪子は頷いた。「分かりました。」

……

光文堂グループ本社。

午後三時半、野村香織は斎藤雪子と共に会議室を出た。本来なら飛行機を降りてすぐに家に帰って寝るつもりだったが、斎藤雪子に会社に連れて来られてしまった。来たからには、グループの幹部会議を開いて、次四半期の業務について指導と手配を行うことにした。

野村香織は言った。「他に用がなければ帰るわ。何かあったらいつでも連絡して。」

斎藤雪子は尋ねた。「送りましょうか?」

野村香織は言った。「グループが専属運転手を付けてくれているでしょう?彼らを遊ばせておくの?」

斎藤雪子は頷いた。「では吉田叔父さんに送ってもらいましょう。」

吉田叔父さんは、グループが野村香織に付けた専属運転手で、若い頃は自動車教習所の教官をしていた。後にここの給料が良かったので専属運転手として来たのだ。吉田叔父さんは実直で口数が少なく、酒も煙草もやらず、悪い癖もない。運転技術は速くて安定していて、彼の車に乗るたびに、野村香織は安心して仮眠を取ることができた。

……

花浜ヴィラ。

野村香織が家に入るやいなや、小村明音から電話がかかってきた。「スター様、また暇になったの?」

小村明音の意地悪そうな声が聞こえてきた。「暇にならざるを得ないわ。さっき番組のディレクターとゲストが殴り合いの喧嘩を始めて、今は番組スタッフ全員が混乱状態よ。他のゲストも私たちも、みんな自分の車の中で待機してるわ。今日収録できるかどうかも分からないわ。」

野村香織は眉を上げた。「ディレクターと殴り合いするなんて、もう業界で生きていく気がないってことね。」