青木翔はこの言葉を道中ずっと聞かされ、両耳にタコができそうなほどだった。渡辺大輔をホテルの予約済みの部屋まで支えながら歩く間、通りすがりの人々から白い目で見られ続けた。事情を知らない人々は、渡辺大輔をクズ男と思い込み、その友人である青木翔もろくな人間ではないと思い込んでいた。
しかし、青木翔が予想もしなかったことに、渡辺大輔は彼と一緒にエレベーターに乗ったものの、自分の部屋には戻らず、直接野村香織の総統スイートルームの前まで行ってしまった。
渡辺大輔が自分の部屋に戻ることを頑なに拒否し、ここで野村香織の門番をやろうとしているのを見て、青木翔は呆れて言った。「最後にもう一度聞くけど、自分の部屋に戻るのか戻らないのか?」
渡辺大輔は彼を睨みつけて言った。「うせろ!帰りたければ帰れ、俺の邪魔をするな。」
罵られた青木翔はこめかみを揉みながら、今後二度と渡辺大輔に酒を飲ませないことを決意した。少なくとも自分は絶対に渡辺大輔と飲まない。白い目に耐えながら必死で連れ戻してきたのに、結果は「うせろ」の一言。これ以上どうやって人をいじめれば気が済むというのか?誰だって気の短い赤ちゃんなのだ。
「いいよ、そこで立ち番でもしてろよ。もう二度とお前の面倒は見ないからな!」青木翔は強く言い放ち、エレベーターの方へ向かった。善意が仇となるなんて、もう渡辺大輔という薄情者の世話はしたくなかった。
十秒後、青木翔は不機嫌な顔で戻ってきた。野村香織のドアの前から動こうとしない渡辺大輔を見て、思わずため息をついた。このまま渡辺大輔を放っておくのは忍びなかった。この状態の渡辺大輔は見ているだけで可哀想でたまらなかったからだ。
青木翔は渋い顔で言った。「大輔、お前の親友として、俺はもう十分やったと思う。俺が親父のためにやることよりも多くのことをお前のためにやってきた。お前がこんなに苦しんでいるのを見るのは俺も辛い。今日は覚悟を決めた。もう一度お前の暴走に付き合おう。」
言い終わらないうちに、青木翔は野村香織の部屋のドアの前に歩み寄り、手を上げてドアをノックした。「コンコン」という音が廊下中に響き渡った。
数回ノックした後、青木翔は言った。「失礼します、ルームサービスです!」