河東国際空港。
野村香織は荷物を引きずりながら到着した時、すでに夜の9時だった。素早くチェックインを済ませ、VIPラウンジで従兄の田中進を見つけた。
野村香織が隣に座るのを見て、田中進は尋ねた。「聞きたいことがたくさんあるだろう?」
野村香織は頷いて言った。「おじいちゃんと大叔父さんは、私の両親のことを知っているの?」
田中進は頷いた。「彼らも最近知ったばかりだよ。」
田中家がどんな人たちであれ、田中隆之をこれほど長く探し続けてきたという事実だけでも、田中家の方々が人や物事に対してとても情が深いことを示している。この人間味のある真情を思うと、野村香織も田中家を訪ねてみたいと思った。
しばらく沈黙した後、野村香織は心配そうに言った。「おばあちゃんの病気があんなに重いのに、私に会ったら...」
正直なところ、おばあちゃんが自分を見た途端に息を引き取ってしまうのではないかと非常に心配だった。人の願いが叶えば自然と未練がなくなり、心の中の粘り強さも消えてしまう。そして、おばあちゃんと会ってすぐにさよならを言わなければならないことも怖かった。
田中進は彼女の気持ちを理解し、慰めた。「そんなに考え込まないで。やるべきことはやらなきゃいけない。どう考えても、おばあちゃんに一生の後悔を残したまま逝かせるわけにはいかないでしょう?」
飛行機の中で、田中進は隣に座る野村香織を見て言った。「おばあちゃんが待っているよ。強く生きていってほしい。」
野村香織は頷いた。「うん、頑張るわ。」
おばあちゃんのことを考えていると、母のことも思い出した。母が自分が今日おばあちゃんの家に行くことを知ったら、九泉の下で喜んでくれるだろうか。あの時、西野玉木一家との関係を絶った後、母は名前を小野沙里に変えた。明らかに自分が以前隆之と呼ばれていたことは覚えていたが、元の姓を思い出せなかったのだ。
田中進は野村香織を見つめながら、心の中で感嘆した。この従妹は本当に強い性格をしている。普通の人なら、このような突然の出来事を受け入れることは難しいだろう。
……
香川市空港。