第413章 青木翔のアシスト

青木翔たちが知らなかったのは、この間、野村香織もあまり良い生活を送っていなかったということだった。渡辺大輔が彼女の生活から完全に消えてから、最初は何も感じなかったが、しばらくすると心の中に何か空虚感を覚えるようになった。そして、彼女は特に暇になることを恐れていた。なぜなら、少しでも暇になると、つい渡辺大輔のことを考えてしまい、あの夜のボクシングジムでの強引なキスを思い出し、さらには渡辺大輔と知り合ってからの様々な出来事を思い出してしまうからだった。

渡辺大輔との3年間の結婚生活で苦労し、辛い思いをし、離婚までしたにもかかわらず、今のように渡辺大輔と完全に連絡が途絶えたことはなかった。彼女の目には、もはやあの男の姿は映らない。幼い頃から好きだった男の姿は。

実際、野村香織も自分がどうしたのかわからなかった。最近は何をしていても上の空で、会議中でさえそうだった。幹部たちの業務報告を聞いているときも、まるで魂が抜けたようで、斎藤雪子は彼女の体調を心配して、医者に診てもらうことを提案したほどだった。

……

渡辺邸。

青木翔は玄関で30分もノックし続けて、やっと渡辺大輔の部屋のドアを開けることができた。窓は開いていて換気は十分だったが、リビングに入った途端、立ち込める煙の臭いに驚いた。青木翔は鼻を押さえながら言った。「くそっ、大輔、自殺でもする気か?こんなに家の中でタバコを吸いまくって。」

渡辺大輔は彼を蹴り飛ばしたい衝動を抑えながら言った。「用件があるなら早く言え!」

青木翔はテーブルの方に歩み寄り、散らばった空き瓶とタバコの箱を見て、首を振った。「お前さ、振られただけじゃないか。こんなに落ち込むことないだろう?」

渡辺大輔は目を見開いて何か言おうとしたが、青木翔は急いで笑いながら言った。「まあまあ、本題に入ろう。お前、あの日野村香織に幸せになってくれって言ったんだろう?親友として言わせてもらうけど、その言葉は早すぎたんじゃないか。これを見てから、本当に手放すべきか決めたほうがいいと思うぞ。」

そう言いながら青木翔は手にした書類の入った封筒を渡した。野村香織に関することと聞いて、渡辺大輔はまた胸が痛んだが、手を伸ばして封筒を受け取り、中身を見始めた。

数分後、渡辺大輔は眉を上げた。「これらの資料はどこで手に入れたんだ?」