第24章 誘惑

加藤律の怪我は回復が早く、加藤真凜は七郎おじさんが病気で休養が必要だと思い込み、素直に勉強に励んでいた。

私は問題解決を口実に、問題集を持って彼の部屋で勉強することにした。

加藤律はベッドの枕元で本を読み、私は机に座り、お互いに邪魔をしなかったが、この雰囲気のおかげで私の効率は驚くほど上がり、成績も急上昇した。

そうして加藤律は私が彼の部屋に滞在することを黙認し、私は彼のプライベート空間への侵入に成功した。

「ドン！」私はぼんやりと目を開け、床に倒れた椅子を見つめ、一瞬頭が真っ白になった。

目の前に手が差し伸べられた。

見上げると、加藤律の笑みを含んだ目があった。

私は椅子に座ったまま眠ってしまい、椅子ごと床に倒れていたのだ。

加藤律は笑いをこらえながらも、とても楽しそうだった。

「遅くなったから、もう勉強はやめて、部屋に戻って寝なさい」彼は優しく言った。

私は彼の手を掴んで立ち上がり、そのまま彼のベッドに飛び込んで言った。「面倒くさいから、ここで寝るわ！」

周りは静まり返り、おそらく加藤律は呆然としていただろう。

私は気にしない。第一段階は彼の部屋への侵入、第二段階はもちろん彼のベッドへの侵入だ。

加藤律の性格では、彼が自ら私の側に来るようにするには、一つの可能性しかない——前世の経験をもう一度繰り返すこと。

でも今の私は全く新しい南野星だ。二度とあんな目に遭うことはない。

では加藤律はどうすればいいの？

私から彼に近づくしかないわね。

「南野星！南野星！」彼が私を呼ぶ声が聞こえた。

無駄よ、私は起きないわ。

「南野星、部屋に戻って寝なさい」彼は私の袖を引っ張った。

私はうんざりして、彼を押し倒し、目も開けずに寝返りを打って布団をかぶった。「うるさいな、寝るよ、疲れたから」

しばらくして、隣から衣擦れの音が聞こえた。きっと加藤律がベッドの反対側に移動したのだろう。

私は密かに思った。これからは、私たちの部屋にはキングサイズベッドは置かない。二人で寝るなら、ぴったりくっついて寝るのがいいわ！

本当に疲れていた私は、加藤律の香りに包まれた布団の中で、次の誘惑作戦を考える前に眠りに落ちてしまった。今度は本当に眠ってしまったのだ。

私の体内時計はすでに訓練されていて、6時のアラームが鳴る前に目が覚め、静かにアラームを待つのが習慣だった。

しかし目覚めた瞬間、私は突然思い出した。私は加藤律の部屋にいるのだ！

私の細胞一つ一つが喜びに震え、思わず息を止めた。

右上から微かな寝息が聞こえてきた。

加藤律だ！

薄明るい朝の光がカーテンの隙間から差し込み、その光を頼りに、私はそっと体を翻して加藤律を見た。

加藤律はなんて美しいのだろう！眠っていてもこんなに美しい。

彼は自分の腕を枕にして、体を少し丸め、長いまつげを下げ、美しい弧を描いていた。高くまっすぐな鼻筋が彼を冷たく見せ、本当は綺麗な薄い唇をいつも軽く結んでいるため、厳しく見え、人を畏怖させる。

でも私は怖くない！

私は彼を愛している！

こんな加藤律を見ていると、私の心は春の水のように溶けていく。

我慢できずに近づき、彼の唇にキスをした。

加藤律は驚いて、本能的に手を上げて私を防ぎ、一瞬で私の腕をねじ上げ、枕の上に押さえつけた。

きっと私を暗殺者だと思ったのだろう？

「あっ！」私は叫んだ。

彼の手はすぐに緩んだ。この人は眠りから覚醒して反応するまで一秒もかからない、これはまさに本能だ。

私だと分かると、彼の身体から緊張感が一気に抜け、困惑した様子で「何をしているんだ？」と言った。

私はお構いなしに、彼の胸に飛び込み、首に腕を回して、何も言わずに彼の唇にキスをした。

加藤律は呆然とした。

全身が硬直している。

私は心の中で笑いながら、舌を出して彼の唇を丁寧になぞり、軽く吸ったり噛んだりした。前世の最後の夜のように、彼の情熱を引き出す方法を知っている。

加藤律の呼吸が荒くなってきた。

私が彼の歯を開こうとしたとき、彼の反応が返ってきた。

私は彼にきつく抱きしめられ、彼のキスは激しく返ってきた。まるで私を生きたまま飲み込もうとするかのように。薄い寝間着の下で、彼の興奮を感じることができた。

私は心の中で満足げに笑った。

加藤律、あなたは私のものよ！

今世では私が落ちぶれなければ、いつ彼を誘惑できるだろう？

彼の内面がどれほど紳士的で、どこまで自制心があるのか、私は完全に知っている。

だから、彼にチャンスを与えてはいけない！

私から彼に絡みつかなければ。

息が苦しくなったころ、加藤律はようやく私を離した。

彼は息を切らしながら、じっと私を見つめた。

私は人差し指を唇に当てて「シーッ！『ごめん』なんて言ったら承知しないわよ！」

彼の表情は困惑と当惑が入り混じっていた。「南野星、君は——」

私は身を起こし、彼の唇に軽くキスをして、後ずさりしながら言った。「私、あなたを好きになっちゃったの。知らなかった？」

私は問題集と携帯を手に取り、小走りで彼の部屋を出た。

ねえ、ゆっくり目を覚ましてね！