第213章 平野由奈

私と麦田絵麻は驚いた顔で平野由奈を見つめた。

平野由奈は私たちの視線に縮こまり、とても落ち着かない様子で後ろに引っ込んだ。「わ、私はネットのニュースを見て、きっと、うん、とても盛大な場面だろうと思って。私、私はまだ一度もこういう場面を見たことがなくて、もし、もし可能なら、見聞を広めたいと思って...」

平野由奈がそう言うと、顔が真っ赤になった。

私と麦田絵麻は顔を見合わせた。

麦田絵麻は軽く咳払いをした。「行くのは構わないけど、言うことを聞いてもらわないとね」

平野由奈は素早く顔を上げて麦田絵麻を一瞥すると、また俯いた。彼女は麦田絵麻の前ではあまり話す勇気がなかった。

私たち三人が名家の出身だと知ってから、彼女との距離は開いていた。普段は寝るためだけに戻ってきて、他の時間はほとんど部屋にいなかった。というより、私たちがいる時は彼女がいなかった。

麦田絵麻は私と加藤真凜と親しくなってから、姫様病がかなり治まり、人をいじめることもなくなった。

実は彼女は硬い外殻の下に柔らかい心を持っていて、本質的にはお人好しなのだ。

しかし、彼女が最初に来た時の強気な態度がすでに有名になっていたため、一般的に人々は麦田絵麻を見ると避けて通るのだった。

平野由奈は他の学生たちの目には不運な子で、こんな恐ろしい人と同じ寮に住むことになり、さらに私のような手ごわい相手もいる。

おそらく平野由奈の小さなグループの人たちは彼女をとても同情しているだろう。

私たちの忙しい生活のせいで、平野由奈というこの影の薄い存在にほとんど注意を払っていなかった。

「わ、わかりました」平野由奈はもごもごと言った。

麦田絵麻は不満そうに言った。「平野由奈、なんでそんなに私を怖がるの？私は人を食べたりしないわよ！私と話すときにどうしてそんなに震えているの？そんな態度じゃ、私たちはあなたを連れて行けないわ」

私はベッドから飛び降り、平野由奈の横に立って彼女の肩をポンと叩いた。「気にしないで、麦田絵麻は紙の虎よ。信じないなら今彼女と喧嘩してみて。最初に泣くのは絶対彼女だから！」

平野由奈は目を上げて感謝の眼差しで私を見て、少し恥ずかしそうにした。