第212章 才能

私は微笑んで言った。「姫様、物事は表面だけを見てはいけませんよ。南野陽太が加藤蓮と結婚したとして、その後はどうなるの?どうやって生活していくの?加藤蓮は南野陽太のことを利用したいだけで、最初から結婚する気なんてなかったのよ。彼が本当に娶りたかった人は、最初から最後まで鈴木千代だったわ」

麦田絵麻は口を「O」の形に開けたまま、しばらく閉じることができなかった。「じゃあ南野陽太は、寂しい結婚をするってこと?」

今の南野陽太は、前世の南野星だ。

彼女が前世の南野星と同じ道を歩まないことを願うばかりだ。最終的に命まで失ってしまったのだから。

もし本当にそこまで行ってしまったら、南野家も南野陽太を戻らせないだろう。一度加藤家に嫁いだら、加藤家で一生を終えるしか道はない。つまり、すでに南野家全体から見捨てられているということだ。

南野陽太の姿から、私は前世の南野星が歩んだ道のりを一つ一つはっきりと見ることができる。

ただ、南野星は周りに決められたことで、最初から最後まで何が起きているのか理解していなかった。一方、南野陽太は一歩一歩自分で選んできたのだから、天を恨むことも、人を責めることもできない。

私は微笑んで言った。「だから、一番得をするのは鈴木千代よ。加藤蓮が最も愛している人は依然として彼女で、やむを得ず他の人と結婚したことで、彼女に対してより一層申し訳なく思うでしょうね」

「帝都派の方々がM市に足場を固めようとしたのは、本来なら簡単なことだったはずなのに、思いがけず私の叔父さんと加藤律の妨害に遭い、今では南野グループという新たな勢力も加わって、事態は彼らが想像していたほど単純ではなくなった。速戦即決から持久戦へと変わり、計画を練り直さざるを得なくなった。月島糸が社長になるのは意外ではないけど、意外だったのは鈴木千代が副社長になったことね」

麦田絵麻は何度もうなずいた。