私がまだ話し始めていないうちに、背後から澄んだ声が聞こえてきた。「本当に自己中心的な人を見たことがないなら、自分勝手に自分を定義しないで!」
麦田絵麻だった。
いつの間に階段のところに立っていたのか、おそらく私たちの会話を全部聞いていたのだろう。
彼女の顔色はあまり良くなかった。自分と母親のことが原因なのか、それとも平野由奈の話を聞いたからなのか分からない。
平野由奈は少し緊張して立ち上がった。「ま、麦田絵麻、大、大丈夫?」
彼女は今でも先ほどの麦田絵麻の怒りを心配していた。
平野由奈は典型的な人に好かれようとするタイプで、何かあると常に最初に考えるのは自分ではなく、他人のことだ。
麦田絵麻は手を伸ばして彼女をソファに押し倒した。「座ってなさいよ、何を緊張してるの?私は人を食べたりしないわよ!」