第362章 遠慮

深夜、平野由奈が私を訪ねてきた。

私は彼女に飲み物を一本渡し、バルコニーの籐椅子に座った。深夜の病院も賑やかなものだ。結局のところ、生老病死は昼夜で決まるものではない。

ただ、私たちがいるVIP病室は独立した空間で、言ってみれば、これこそ資本の力だ。

平野由奈は遠くの連絡通路の明かりと、両側に座ったり横になったりしている患者の家族を見て、静かに言った。「かつて私もあの廊下の隅で身を縮めていた一人だったわ。」

私は飲み物を一口飲んだ。「これからはそうならないよ。」

彼女はうなずいた。「でも本来なら、私はあそこで身を縮める必要なんてなかったのよ。」

私は彼女を一瞥して、微笑んだ。「失ったものを取り戻したいの?」

彼女は私を見つめた。「南野星、それはおかしいことかしら?」

私は彼女を見ずに首を振った。「おかしいかどうかは、あなたが当事者なんだから、他人の意見を求める必要はないよ。」

彼女は私を見て、軽くため息をついた。「南野星、私があなたのそういうところが一番好きよ。あなたは尊重することを知っていて、最も慈悲深い。」

私は笑った。「平野由奈、それは私が聞いた中で最高の褒め言葉だね。慈悲深い?ふふ、私のどこが慈悲深いの?ただ他人事だから関心がないだけだよ。」

私は笑みを消して、真剣に言った。「平野由奈、私はあなたじゃない。外で流浪したこの数年間、あなたがどれだけ苦労して、どれだけの罪を受けたのか、あなたが大切だと思っていた人や物をどれだけ失ったのか、私には分からない。だから、傍観者の立場からあなたにアドバイスする資格はないんだ。」

平野由奈はうなずいた。「だから、あなたが慈悲深いと言ったのよ。あなたが南野家を離れても、彼らに復讐しないのを見てきたわ。」

私は横目で彼女を見た。「私のことを調査したの?」

彼女は笑って、隠そうとしなかった。「自分の目標を達成するためには、周りの人のことを知っておく必要があるでしょう。」