069 3人の兄

藤丸詩織は両目を閉じ、イライラしながら手を上げてこめかみを揉んでいた。片桐沙耶香に「そうだ、ついでに長谷慧を私のところに呼んでくれ」と言った。

片桐沙耶香:「はい、藤丸社長!」

片桐沙耶香が出て行ってしばらくすると、長谷慧が入ってきた。彼女は笑顔で「藤丸社長、桜井社長との面会を承諾したのは私の当然の務めです」と切り出した。

長谷慧は今でも、藤丸詩織が自分を褒めに来たと思い込んでいた。

藤丸詩織は書類から顔を上げ、冷たい目で長谷慧を見つめながら「上司に黙って勝手に決定を下すのが、あなたの務めだというの?以前、桜井家を断るように言ったはずよ。なぜまだ承諾したの?」と言った。

長谷慧は藤丸詩織の言葉を聞いて呆然とし、「どうしてですか?私たちの会社と桜井家の協力は利点しかないはずです。私も会社のことを考えて…」と戸惑いながら言った。