067 本当に縁起が悪い

人々は藤丸詩織の様子を見て、心の中に一瞬同情の念が湧き上がり、同時にこの時になって、後から気づいたことについて、周りの人々と小声で話し始めた。

「私たち、さっき利用されたんじゃない?」

「私の理解では、この女性は他人の許可も得ずに他人の家に住み込み、今追い出されて被害者ぶっているってことで、今は若い女の子に道徳的な圧力をかけているってことよね?間違ってない?」

「その通りよ!あの子はほんと優しすぎるわ。あんな目に遭わされても、まだこんなに親切にできるなんて。私だったら、医療費を払うどころか、見向きもせずに、毎日家でこの一家に不幸が降りかかることを祈ってるわよ!」

……

人々の言葉が一つ一つ藤丸詩織の耳に届き、彼女は思わず笑みを浮かべ、心の中で非常に満足を感じ、足取りまで軽くなった。

一方、竜崎美奈の顔は今や真っ黒になっていた。彼女は元々藤丸詩織が親不孝者として非難されることを期待していたのに、予想に反して藤丸詩織は非難されるどころか、今や自分が人々の唾棄の的となっていた。人々の視線を避けるため、しぶしぶ藤丸明彦の病室に逃げ込むしかなかった。

藤丸詩織は翌朝目覚めた時、気分が非常に悪かった。全て藤丸明彦が暴力を振るう時間を夜に選んだせいで、そうでなければこんなに深く眠ることもなく、仕事に遅刻することもなかったはずだ!

そして藤丸詩織の気分をさらに悪くし、不愉快にさせたのは、会社に入る時に、桜井蓮も入ってくるのを見かけたことだった。

桜井蓮も藤丸詩織を見かけ、眉をひそめて彼女を上から下まで見渡し、冷たい声で言った。「昨日は私に興味がないと言っていたのに、今日は私をストーカーするのか。」

一瞬、藤丸詩織は幻聴を疑い、思わず反論した。「桜井社長は目が覚めてないんじゃないですか?そうでなければ、私があなたをストーカーしているなんて言えるはずがないでしょう?」

桜井蓮は軽く舌打ちをし、軽蔑した口調で言った。「目が覚めてないのは私なのか、それともお前が強情なだけなのか。藤丸詩織、最後にもう一度言っておく。諦めろ、私は絶対にお前のことを好きにはならない。それと、お前が外で私の悪口を言っていることについては、今は一旦不問に付しておく……」