藤丸明彦と竜崎美奈は目を輝かせ、急いで電話に出て、焦りながら尋ねた。「妹よ、今どんな状況なの?」
藤丸志穂は落ち着いて答えた。「安心して、私のやり方は信頼できるわ。こちらの者から報告があって、藤丸詩織は高速で走行中に山に激突して、山の一部まで崩れたそうよ。今回は間違いなく死んでいるはずよ!」
藤丸明彦と竜崎美奈は目を合わせ、お互いの目に喜びが浮かんでいるのが分かった。
藤丸明彦はベッドに横たわりながら興奮して言った。「やっぱりこういうことは君に頼るべきだったな!前回の私の失敗は怪我を負っただけで、今でも体が痛むよ。」
藤丸志穂は「ちっ」と舌打ちして黙っていた。これだけ年月が経っても、兄はこんなに役立たずのままだと思った。
藤丸明彦は志穂の嘲りに気付かず、心配事を口にした。「でも3年前のクルーザー事件でも、藤丸詩織は生還したじゃないか。今回も運良く生き延びるんじゃないのか?」
藤丸志穂は冷たい声で言った。「3年前の爆弾は私が直接クルーザーに仕掛けたのに、あそこで死ななかったのは本当に残念だったわ。でも今回生き延びたとしても構わないわ。藤丸詩織がまた姿を現すなら、また殺す方法を考えればいいだけよ!」
藤丸明彦はその言葉を聞いて安心し、くつろいで言った。「藤丸詩織が死んだら、藤丸グループを取り戻して、また良い暮らしができるようになるな。」
藤丸志穂はそれには無関心で、適当に「用がないなら切るわ。私はまだ忙しいから。」
藤丸志穂はそう言うと、藤丸明彦の反応を待たずに電話を切った。
竜崎美奈はそれを見て、不機嫌そうに言った。「藤丸志穂って何なの、その態度は?」
藤丸明彦は気にせずに「藤丸詩織を殺してくれるなら、どんな態度でもいいさ。それに、もうそんなことを言うな。じゃなきゃ今後はお前がやるのか?」
藤丸明彦はそう言うと、竜崎美奈を無視した。ベッドに横たわったまま、窓の外の木を陰鬱な表情で見つめ、狂気じみた笑みを浮かべた。藤丸哲也、お前の一人娘がもうすぐお前に会いに行くぞ、嬉しいか?
かつて藤丸哲也は藤丸グループを一から創設した。藤丸明彦は実の弟という立場で、少なくとも管理職のポストぐらいは得られると思っていたが、まさか底辺からやり直せと言われるとは思わなかった。後に仕事で少しミスをしただけで、容赦なく会社をクビにされた。