106 救療

周防司は顔色を変え、「サッ」と立ち上がって飛び出していき、藤丸詩織と橘譲の二人も急いで後を追った。

三人が到着した時、周防彰はすでに気を失って倒れていた。

藤丸詩織は表情を引き締め、周防彰の傍らに屈んで診察を始め、瞳孔を確認した後、おおよその状況を把握した。

ただし、確実な診断にはさらなる検査が必要で、藤丸詩織が周防の服のボタンに手を伸ばした時、突然周防司に手を掴まれた。

周防司は冷たい声で藤丸詩織の手を振り払い、怒りを込めて言った。「何をしているんだ?」

周防司は、運転手に薬を持ってくるよう電話し、救急車を呼ぶという短い時間の間に、気がつけば藤丸詩織が勝手に祖父に触れているのを見て驚いた。

周防司は強い力で振り払ったため、藤丸詩織の白い手首には赤い痕が残り、骨まで染みる痛みが走った。

橘譲は不快な表情を浮かべ、大きな足取りで前に出て藤丸詩織の手を取り優しく揉みながら、冷たい目で周防司を見つめて言った。「詩織は周防のお爺様を救おうとしているんだ。邪魔をするな。」

周防司は藤丸詩織が医術を心得ているなど聞いたことがなく、それどころか周防彰の前に立ちはだかって藤丸詩織に言った。「もうすぐ運転手が薬を持ってくる。祖父は薬を飲めば良くなる。お前に実験台にされる必要はない!」

藤丸詩織は深く息を吸い、周防司を殴りたい衝動を抑えながら説明した。「周防のお爺様はすでに意識を失っています。薬が来ても飲むことはできません!今の状態は危険で、あなたがこれ以上邪魔をすれば、命の危険があります。」

その時、運転手が息を切らしながら薬を持って走ってきて、周防司を見つけて叫んだ。「若旦那様、薬を持ってまいりました。」

周防司は急いで薬を受け取り、周防彰の口に入れようとした。

しかし、周防彰の口は固く閉じられており、大きな力で無理に入れても、飲み込まなかった。

周防司はこの状況を見て焦り始め、特に病院からは渋滞で到着まで時間がかかると連絡があったことで、さらに不安になった。

周防司は額に汗を浮かべながら、「どうすれば、どうすれば...」と焦っていた。

藤丸詩織は周防司が周防彰の前に立ちはだかり続けるのを見て、我慢できなくなり、橘譲に事態の深刻さを伝えた。「譲さん、このまま治療が遅れれば、助からなくなる可能性があります。」