かつての海外での暗殺事件により、桜井蓮は大きなトラウマを抱えることになり、しばしば悪夢にうなされていた。そんな時はいつも、藤丸詩織が彼の耳元で優しく慰めていた。
藤丸詩織の優しい声を聞くと、徐々に眠りに落ち、ぐっすりと眠ることができた。しかし翌朝になってそのことを思い出すと、とても面目が立たず、彼女に当たり散らしていた。
桜井蓮は藤丸詩織が自分に良くしてくれることを認めていたが、彼女が拝金主義者だと思うと胸が悪くなり、態度はますます冷たくなっていった。
藤丸詩織はその度に目に涙を浮かべながらも、強がって笑顔を見せ、一言の不満も言わず、次も変わらず彼に優しくしていた。
全ての変化は水野月奈が帰国し、彼が再び藤丸詩織との離婚を持ち出した時に起きた。彼女は断固として離婚に同意し、最初は藤丸詩織の駆け引きだと思っていたが、まさか本気だったとは。今や彼女の目には、かつての温もりが一切なくなっていた。