128 親族を見つける

桜井雨音は目を見開いて、藤丸詩織を信じられない様子で見つめながら言った。「あなたは孤児なのに、もし親族がいたら、とっくに見つけてくれたはずよ。どうしてこんなに長い年月が経ってから見つかったの？しかも、お兄さんと離婚するタイミングで！」

桜井雨音は一瞬止まり、藤丸詩織を上から下まで見渡して、軽蔑した口調で言った。「ショックを受けすぎて、妄想症になったんじゃないの？」

桜井桉慈は眉をひそめ、桜井雨音を見つめながら厳しい声で言った。「何を馬鹿なことを言っているんだ？私はとっくに詩織を孫として認めることを決めていたんだ！」

桜井雨音は呆然として、我に返ると甲高い声で尋ねた。「どうしてですか、おじいちゃん？私という孫がいるのに、どうして藤丸詩織を孫として認めるんですか？」

高遠蘭子も焦った。彼女は以前、やっとの思いで藤丸詩織を桜井家から追い出したのに、お爺さまが彼女を孫として認め、再び家族になろうとしているなんて。

高遠蘭子は急いで言った。「お父様、それは良くないと思います。だって、藤丸詩織は以前お父様の義理の娘だったのに、今度は孫になるなんて、おかしいじゃありませんか？」

桜井桉慈は表情を変えず、この二人の言葉を全く心に留めていなかった。

藤丸詩織は仕方なく溜息をつき、桜井桉慈が本当は彼女が親族を見つけたことを信じていないことを知っていたので、こう言った。「おじいさま、私は嘘をついていません。本当に親族を見つけたんです。私の両親は東京の藤丸家の創業者、藤丸哲也と橘静香です。」

桜井桉慈は呆然とした。

高遠蘭子と桜井雨音は目を合わせ、お互いの顔に浮かぶ驚きの表情を見た。

ビジネス界にいる人なら誰でも、藤丸哲也と橘静香という二人の名前を聞いたことがあるはずだ。彼らは天才的な才能の持ち主で、短期間で一から藤丸グループを立ち上げ、様々な業界のトップに上り詰めた人物だった。

もし藤丸哲也と橘静香が藤丸詩織の実の両親だとしたら、それは藤丸詩織が噂の藤丸家のお嬢様だということを意味するのではないか？

いや、そんなはずがない、絶対にありえない！

高遠蘭子と桜井雨音は心の中で何度も否定し、同時に声を上げた。「藤丸詩織が藤丸家のお嬢様なんてありえない！」