138 もう行っていいよ

桜井蓮は箱の中身を見て、完全に呆然としてしまった。箱の中のものは全て見覚えがあった。それらは全て藤丸詩織が彼にくれたプレゼントだったからだ。

腕時計は結婚一周年、スーツは結婚二周年、その他のプレゼントは藤丸詩織が様々な記念日に用意してくれたものだった。そして彼は毎回プレゼントを受け取る度に、藤丸詩織に冷たい言葉で嘲り、プレゼントを容赦なくゴミ箱に捨てていた。

桜井蓮は思いもよらなかった。プレゼントを捨てた後、藤丸詩織がそれらを一つ一つ拾い集め、丁寧に整理して、大切に箱の中にしまっていたなんて。

でも三周年のプレゼントはどこに?

桜井蓮の視線がゴミ箱に落ち、中身を確認すると、一瞬呆然となった。ぼんやりとゴミ箱の方へ歩み寄り、かがんで中からネクタイを拾い上げた。

これは藤丸詩織が三周年に贈ってくれたプレゼント、そして彼女が離婚を切り出した日のものだった。