桜井蓮はまだ覚えていた。あの時、藤丸詩織がその言葉を言い終えた後、顔を赤らめながら彼にお守りを付けようとしたが、彼は彼女が意図的に彼の機嫌を取ろうとしているのだと思い、きっと何か下心があるのだと考え、彼女を見る目が次第に嘲笑と軽蔑を帯びていった。
藤丸詩織は彼の視線の下で、次第に笑顔を保つことができなくなり、必死に声を絞り出して言った:「あなた……」
藤丸詩織が言葉を言い終える前に、彼は彼女の言葉を遮り、冷たい声で言った:「こんな役立たずなものはいらない!」
そう言うと、彼は藤丸詩織の手からお守りを奪い取って地面に投げつけ、さらに二度踏みつけた。
藤丸詩織の瞳の輝きが徐々に失われていき、無理に笑顔を作って料理を作りに行くと言い、急いでその場を離れた。
藤丸詩織の動きは速かったが、彼は彼女の瞳に光った涙と、急いで立ち去る慌ただしい足取りを見逃さなかった。
桜井蓮はそれを思い出すと、さらに頭が痛くなった。脳裏には泣きじゃくる藤丸詩織の震える肩が繰り返し浮かんできた。
桜井蓮はほとんど崩壊寸前で、よろよろと彼と藤丸詩織の寝室に戻った。あの時ここでお守りを捨てたはずだが、どこを探してもお守りの姿は見当たらなかった。
もしかしてベッドの下に落ちたのだろうか?
桜井蓮はその可能性を考えると、自身の潔癖症も顧みず、すぐに床に這いつくばってベッドの下を覗き込んだ。ベッドの下のスペースが狭すぎなければ、這い込んで探したいくらいだった。
しかし、しばらく見ても、お守りの姿は見えず、代わりにベッドの下の隅に箱があるのが見えた。
これは何だろう?
桜井蓮は手を伸ばして、しばらく苦労して箱を取り出したが、暗証番号がかかっていることに気づいた。
この箱は間違いなく藤丸詩織のものだ。そして彼女が設定する暗証番号は、おそらく彼の誕生日だろう。結局、彼女の携帯電話のロック解除パスワードも彼の誕生日なのだから。
桜井蓮は目を伏せ、震える手で暗証番号を入力した。
次の瞬間、箱から音がして、ロックが解除されて開いた。濃厚な香りが桜井蓮に向かって漂ってきた。
桜井蓮は呆然としたが、それでも思わず深く数回嗅いでしまった。
数分後、桜井蓮は徐々に我に返り、箱の中の見覚えのある、しかし見知らぬお守りを見つめ、慎重に手に取った。