榊蒼真が去った後、藤丸詩織はテーブルからケーキを一つ取り、小さく口に運んでいた。突然、耳元で刺々しい声が聞こえた。
藤丸詩織はそれが桜井雨音だとすぐに分かった。
桜井雨音は鋭い声で言った。「藤丸詩織、なぜここにいるの?」
藤丸詩織は心の中で不愉快に感じ、振り向いて桜井雨音の隣に立つ桜井蓮を見て、さらに不愉快になった。
藤丸詩織は二人を見ることすら嫌で、手の中の小さなケーキを見つめながら、冷たい声で言った。「私がここにいるのは、当然チケットを持っているからよ。それに、このパーティーは桜井家が主催したものじゃないし、帝都ホテルも桜井家の所有物じゃないでしょう。だから、私がここにいることを制限する資格なんて、あなたたちにはないはずよ?」
桜井雨音は藤丸詩織の一言で顔色を悪くし、唇を噛んでから強引に言い返した。「お兄様がパーティーに来ると知って、しつこくついてきたんでしょ!」