198 お仕置きの計画

藤丸詩織は困惑して眉をひそめ、しばらく考えてから首を振り、真剣に言った。「何も起こっていませんよ。」

橘譲は藤丸詩織を見つめ、心の中で更に心配になった。

藤丸詩織は橘譲の心配そうな眼差しに気付くと、より一層困惑し、不思議そうに尋ねた。「お兄さん、どうしたの?」

橘譲は怒りを込めて口を開いた。「詩織、私に隠さなくていいんだよ。他の人から全部聞いたんだ!桜井蓮の妹の桜井雨音がウェイターを押し倒して、あなたが怪我をしそうになったこと。そして桜井蓮は事の経緯を知っていながら、妹をかばったんだって!」

藤丸詩織は橘譲の言葉を聞いて、やっと何の話かを理解し、「お兄さん、この件は私には影響ないんです。結局、桜井蓮さんも謝罪してくれましたし。」と言った。

橘譲は急いで言った。「桜井蓮が謝ったのは、監視カメラの証拠を出したからだろう。もし監視カメラがなかったら、彼が謝るわけないじゃないか?」

橘譲はここまで話して、突然重大な問題に気付き、厳しい目つきで藤丸詩織の顔を見つめ、尋ねた。「詩織、なぜ桜井蓮をかばうの?もしかして...」

藤丸詩織は橘譲の言葉を最後まで聞かずに、すぐに言った。「私は桜井蓮さんのことが好きじゃありません!」

橘譲はほっと息をついたが、まだ納得がいかず、不思議そうに尋ねた。「じゃあ、なぜ彼をかばうの?」

藤丸詩織は笑いながら説明した。「かばっているわけじゃないんです。ただこの件を気にしていないだけで、お兄さんが言い出さなければ、もう忘れていたくらいです。」

橘譲は思い返してみると、確かにそうだった。

ただ、藤丸詩織が気にしていなくても、自分は気にしないわけにはいかなかった。桜井蓮のしたことを考えると、すぐにでも彼に制裁を加えたい気持ちだった。

橘譲はそう考えながら、藤丸詩織に向かって言った。「詩織、少し疲れたから部屋に戻って休むよ。」

藤丸詩織は頷いて、「はい。」と答えた。

橘譲は藤丸詩織の返事を聞くと、すぐに立ち去った。

藤丸詩織は橘譲の慌ただしい後ろ姿を見て、不思議そうに首を傾げた。とても冴えているように見えたのに、全然休む様子には見えなかった。

橘譲は確かに休むつもりはなく、急いで部屋に戻ったのは、桜井蓮への制裁方法を練るためだった。