222自分で娶れよ

水野月奈は何度も桜井蓮に電話をかけたが、相手は出なかった。ようやく、彼女の携帯が鳴った。

水野月奈は発信者番号も確認せずに電話に出て、甘い声で話し始めた。「蓮お兄さん、お仕事終わりました?休憩時間にはちゃんとご飯を食べてくださいね。」

相良健司は冷たい声で言った。「水野さん、私は相良です。」

水野月奈の表情が冷たくなり、氷のような声で言った。「なんであなたなの?蓮お兄さんは?」

相良健司は水野月奈の感情の変化に慣れていて、淡々とした声で言った。「桜井社長は仕事で忙しいので、私があなたの件を担当することになりました。」

水野月奈は目を転がし、軽蔑した口調で言った。「あなたに何ができるっていうの?」

相良健司は水野月奈の態度を聞いて、心中不快だった。この水野月奈は藤丸詩織さんと比べると、まったく及ばない!

相良健司:「水野さんは桜井社長に直接会いに行くこともできますが、社長が会ってくれるかどうかは分かりません。」

水野月奈は自分が桜井蓮に何度も電話をかけたのに出てくれなかったことを思い出し、しぶしぶ口を開いた。「私の怪我はもうほとんど治ったわ。会社でオフィスを用意してちょうだい。」

相良健司は承諾した。「承知しました。」

水野月奈は相良健司の態度に満足し、「私のオフィスは蓮お兄さんの隣にして。」

水野月奈はすでに、黒いボディラインが際立つスーツを着て桜井蓮を誘惑するシーンを想像し始めていた。

相良健司の一言が水野月奈の計画を打ち砕いた。「申し訳ありませんが、会社では後方支援部門にしか空きポジションがありません。秘書職はすでに満員です。」

水野月奈は驚いて:「何ですって?」

相良健司は先ほどの言葉を繰り返した。

水野月奈:「でも私は前に蓮お兄さんと、会社で秘書として働くって約束したのよ!」

相良健司:「水野さんは体が弱いので、後方支援部門は比較的楽で、ゆっくり休んでいただけます。」

相良健司はこの言葉を言う時、特に「体が弱い」という部分を強調して、明らかに水野月奈を皮肉っているのが分かった。

水野月奈は後方支援部門が桜井蓮のオフィスから会社で一番遠いことばかり考えていて、相良健司の言葉の皮肉に気付かなかった。

水野月奈は怒って言った。「私は後方支援部門なんて行きたくない、絶対に……」