232 三七の配分

桜井蓮は最初、真剣に聞いていたが、藤丸詩織の開閉する赤い唇を見ているうちに、次第に思考が遠くへ飛んでいった。

藤丸詩織は今日、黒いスーツを着ていて、特に凛々しく見えたが、額の前の数本の髪が彼女に柔らかさを加え、全体的に非常に気品のある雰囲気を醸し出していた。

桜井蓮の記憶の中で、エプロンを着て彼の前で時々涙を流していた藤丸詩織とは、まったく違う人物のようだった。

今の藤丸詩織は特に輝いていて、思わず彼女に視線が釘付けになってしまう。桜井蓮はもはや昔の藤丸詩織と今の彼女を結びつけることができなくなっていた。時には三年間の出来事が幻のように感じられることさえあった。

彼には本当に理解できなかった。なぜ当時、藤丸詩織を田舎の孤児だと固く信じていたのだろうか。

藤丸詩織は話し終えると、桜井蓮が上の空になっていることに気づき、不快そうな表情を浮かべながら冷たい声で言った。「桜井社長、私の説明は終わりましたが、何か補足することはありますか？」

桜井蓮は我に返り、藤丸詩織が先ほど話した内容を素早く思い出してから、「いいえ、とても良いと思います」と答えた。

藤丸詩織は頷き、契約書を桜井蓮の前に押し出し、署名するように促した。

しかし桜井蓮は署名せず、藤丸詩織を見つめながら、「利益配分について、一つ質問があります」と切り出した。

藤丸詩織は桜井蓮を見つめ、彼の言葉を待った。

桜井蓮は「周防司さんとの配分比率を教えていただけますか」と尋ねた。

藤丸詩織は「元々は五対五でしたが、後で四対六に変更しました」と答えた。

桜井蓮は誰が四で誰が六なのかは聞かなかった。周防司が藤丸詩織を愛していると言った言葉を思い出せば、答えは明らかだったからだ。

藤丸詩織は桜井蓮が五対五の配分に不満があると思い、「もし少ないとお考えでしたら、再度協議することもできます」と提案した。

桜井蓮は首を振り、「少ないとは思っていません。むしろ多すぎます」と言った。

藤丸詩織は呆然とし、まるで馬鹿を見るような目で桜井蓮を見た。お金が多すぎると言う人を見るのは初めてだった。

桜井蓮は藤丸詩織の視線に動じることなく、「周防司さんが四対六なら、私との配分は三対七にしましょう。私は彼より少なめにします」と言った。

今や藤丸詩織だけでなく、相良健司も桜井蓮を見る目が茫然としたものになっていた。