藤丸詩織は橘譲の様子を見て、笑いながら言った。「三兄さん、どうしてまだそんなに兄さんを怖がっているの?」
橘譲:「だって兄さんは本当に怖いんだよ。詩織ちゃんには三兄の気持ちは永遠に分からないよ!」
藤丸詩織は同意して頷き、「それはそうね」と言った。
橘泉は藤丸詩織の前に立っていた橘譲を脇へ引っ張り、すぐに笑顔で藤丸詩織に尋ねた。「詩織、僕たちからのプレゼントは気に入った?もし気に入らなかったら、他のものを買ってあげるよ!」
藤丸詩織は笑顔で答えた。「気に入ったわ。どんなプレゼントでも、兄さんたちと美音からのものなら、全部好きよ」
藤丸詩織は料理でいっぱいのテーブルを見て、「もう遅いから、食事にしましょう」と言った。
藤丸美音は首を振って言った。「いとこ、もう少し待って。まだプレゼントを渡したい人がいるから」
橘譲:「そうだよ、その人が直接プレゼントを渡したいって」
藤丸詩織は心の中で、藤丸美音と橘譲が言う人が誰なのか気になった。
その時、ドアが開いた。
藤丸詩織が振り向くと、コック服を着た風見翔が料理を持って入ってきた。
風見翔は素朴な笑みを浮かべ、「藤丸さん、私は料理しかできない人間で、他のことは何も分かりません。だから料理を作ってプレゼントにさせていただきました。これは数日かけて研究した新メニューです。お口に合えば幸いです」
風見翔は一品と言ったが、数分のうちに十数品の料理を運んできた。
藤丸詩織は困惑して「これは…」
風見翔は照れくさそうに笑って言った。「今日があなたの誕生日だと思うと、つい作り過ぎてしまいました」
実は、弟子たちに止められなければ、風見翔はまだ作り続けていたことだろう。
藤丸詩織はこれほど多くのプレゼントを見て、目が赤くなり、鼻が詰まった。
橘泉は優しく慰めた。「詩織、泣かないで。まず食事をしよう。家に帰ったらまだプレゼントがあるからね」
藤丸詩織は心の中の好奇心を抑えて、軽く頷いて「うん」と答えた。
藤丸詩織の個室の賑やかさに比べ、桜井蓮の個室はより一層静かだった。
桜井蓮は瞳が暗く、橘泉と藤丸詩織が一緒に去っていく姿を思い出すと、彼の周りから冷気が漂い始め、高遠蘭子は思わず身震いした。
高遠蘭子の顔色も悪かった。