316 事態が逆転

人々は自分たちが利用されていたことに気づき、皆怒り出した。

「私はさっきまで馬鹿みたいだった。水野月奈のような女の味方をするなんて」

「私たちだけを責めることはできないわ。水野月奈が誘導したのよ。彼女は記者の前で弱々しい態度を見せて、私たちに同情を誘うような演技をしていた。完全に私たちの同情心を利用していたのね」

「そういえば、彼女が婚約した時、多くの男性と関係を持っていたことが暴露されたわね。なのに今更、他人を不倫相手だと言い、藤丸さんに対して嫌がらせをするなんて、本当に下劣ね」

「私の記憶力が悪くて気づかなかったわ。今日から水野月奈の名前を覚えておこう。これからは彼女に関するニュースを見ても、絶対に信じないわ！」

人々は水野月奈を非難した後、藤丸さんの公式アカウントで藤丸詩織に謝罪し、同時に彼女への興味も深まっていった。

「藤丸詩織さんがどんな方か知っている人いる？すごく気になるわ」

「私も気になるわ。でもネット上には藤丸詩織さんの情報が全然ないのよね。たとえ誰かが投稿しても、すぐに消されちゃうんじゃない？前に藤丸詩織さんの写真が全部モザイク処理されたみたいだし」

「藤丸詩織さんって本当に謎めいた方ね。さすが会社の社長だわ、独特の品格があるわ」

……

水野月奈はノックの音で目を覚まし、不機嫌そうにドアを開けた。相良健司を見ると、不愉快な口調で尋ねた。「何の用？」

相良健司は冷ややかに言った。「桜井社長が会社に来るように言っています」

水野月奈は目を輝かせ、腕を組んで傲慢に言った。「案内してちょうだい」

相良健司は眉をひそめ、水野月奈を一瞥した。

水野月奈はそれを見て不満げに言った。「桜井お兄さまの前で、あなたの態度を言いつけてやるわ。クビになる覚悟はできてるでしょうね！」

水野月奈は携帯を見ていなかったため、ネット上の状況が変わったことを知らなかった。今、桜井蓮が相良健司を寄越したのを見て、彼が自分の気持ちに気づき、自分のことを好きになったのだと思い込んでいた。

相良健司は水野月奈をバカだと思ったが、何も言わず、黙って彼女を桜井グループへ案内した。

水野月奈は相良健司が黙っているのを見て、自分の言葉に脅されたのだと思い込み、さらに得意げになって、高く顎を上げ、窓の外の景色を眺めていた。