藤丸詩織は目を輝かせ、尋ねた。「椎名先生、よろしければ……」
椎名妙は詩織の言葉を遮って答えた。「いいわよ」
椎名妙:「今回来たのは、あなたが詐欺師じゃないと信じているって伝えたかったの。東京で刺繍業界を発展させたいと思うわ。それと、謝らなければならないことがあるの。あの時、門前で待たせてしまって申し訳なかった」
藤丸詩織は首を振り、優しく言った。「気にしないでください。全ては以前あなたを騙した人たちが悪いんです。彼らがいなければ、あなたもそこまで警戒することはなかったはずです」
藤丸詩織は椎名妙を見つめ、尋ねた。「椎名先生、体調の悪いところはありませんか?診させていただきましょうか」
椎名妙は病院にいなかったものの、池内眠から藤丸詩織が医術を心得ていて、多くの人々を救ったことを聞いていた。そのことを思い出すと、彼女を見る目がより優しくなった。
椎名妙:「私の体は何ともないわ。それより、あなたたちに感謝しなければならないわ。塀を乗り越えて私を探しに来て、ずっと守ってくれなかったら、私はこの地震で命を落としていたはずよ」
椎名妙はドアを閉めた後すぐに寝てしまい、眠りが深かったため外の音が全く聞こえていなかった。最終的に藤丸詩織が来て起こしてくれたのだった。
藤丸詩織は手を振り、笑って言った。「気にしないでください」
椎名妙はこれを真剣に受け止め、「気にするわ!私の持っている刺繍の技術を全て教えるわ。私を助けてくれた恩返しとして!」
藤丸詩織:「椎名先生……」
椎名妙:「椎名先生って呼ぶのは少し変ね。池内眠と同じように椎名おばさんって呼んでくれればいいわ」
藤丸詩織は笑顔で頷いた。「はい!」
榊蒼真は藤丸詩織の笑顔を見て、思わず口角が上がった。
椎名妙は榊蒼真の様子を見て、心の中でため息をついた:この若者の目に愛情が溢れすぎているわね。
藤丸詩織は時間が遅くなっていることに気づき、「椎名おばさん、お休みになられたほうがいいですよ」と言った。
椎名妙は頷いて承諾したが、去る前に尋ねた。「東京にはいつ行くの?」
藤丸詩織は真剣に答えた。「私はプライベートジェットで来ましたので、こちらの用事が済み次第、いつでも出発できます」
椎名妙:「じゃあ、明日にしましょう」
翌日、飛行機の中で。