桜井蓮は目を開けることができず、ぼんやりと人影を見ていた。その女性の姿に見覚えがあるような気がした。
その瞬間、かつて彼を救った名医の姿が目に浮かんだ。
桜井蓮は興奮して目を開けようとし、名医の顔をはっきりと見ようとしたが、睡魔が再び襲ってきて、再び意識を失ってしまった。
藤丸詩織は桜井蓮の表情の変化に気付かず、内傷がなく、確かに表面的な傷だけだと確認すると、視線を戻した。
彼女は再び榊蒼真に目を向け、テーブルの上のヨードチンキを取って彼の背中に薬を塗った。
榊蒼真はゆっくりと目を開け、弱々しく呼びかけた。「姉さん...姉さん...」
藤丸詩織は榊蒼真が目を覚ましたのを見て、やっと安心し、尋ねた。「体の具合の悪いところはある?」
榊蒼真は首を振って、「大丈夫です。ただ擦り傷だけです」と答えた。