326 花を捨てる

藤丸詩織は一瞬固まり、我に返って口を開いた。「誤解よ。私と彼は恋人同士じゃないの……」

池内眠は頷いて、「そうなんですか」

どうやら男性がまだ女性を振り向かせていないようだ。

池内眠は榊蒼真に向かって頑張れのジェスチャーをした。やはり彼はイケメンだし、何より藤丸詩織を見る目が優しさに満ちていたので、彼には期待していた。

榊蒼真は頷いた。

池内眠は二人を村に案内し、そして「まっすぐ進んで、左に曲がれば着きますよ」と言った。

その時、池内のお母さんが何か話し、池内眠は藤丸詩織に伝えた。「母が言うには、椎名妙先生は以前、刺繍コンテストに招待されたことがあるんですが、招待した人が詐欺師だったそうで、それ以来、警戒心が強くなって、あなたの依頼を受けてくれるかどうか分からないそうです」