325 綾里村を探して

藤丸詩織は心の中で可笑しく思った。藤丸美音が自分を恥ずかしがらせるとは思わなかった。

藤丸詩織:「じゃあ、いとこは行くわ」

藤丸美音は素直に頷いた。

榊蒼真が戻ってきた時、ちょうど藤丸詩織がスーツケースを引いて出ようとしているところを見かけ、急いで尋ねた:「お姉さん、どこに行くの?」

藤丸詩織:「綾部市よ」

榊蒼真は藤丸詩織の言葉を聞いて、すぐに口を開いた:「お姉さん、一人で行くのは危ないよ。僕も一緒に行かせて!」

藤丸美音も続けて言った:「そうよ、いとこお姉ちゃん。蒼真お兄ちゃんと一緒に行ったら?」

藤丸美音はまだ幼いが、榊蒼真が時々藤丸詩織を見つめる眼差しを見て、すぐに彼の心中を察した。

それに、飛行機で会ったおじさんより、蒼真お兄ちゃんの方が好きだった。

藤丸詩織:「いいわ、私は今まで多くの場所に行ったことが……」

藤丸詩織は最初まだ理由を言えていたが、二人の期待に満ちた眼差しの下で、彼女の声は次第に小さくなり、最後に榊蒼真を見て言った:「一緒に行きましょう」

榊蒼真の目は瞬時に輝き、急いで言った:「お姉さん、今すぐ荷物をまとめてくる。三分で終わるから」

藤丸詩織は榊蒼真が急いで去っていく姿を見て、声を出した:「急がなくていいわ、ゆっくり準備して」

榊蒼真は素早く返事をしたが、藤丸詩織には彼が自分の言葉を聞いていないような気がした。

藤丸美音は軽く笑い、手を叩いて嬉しそうに言った:「蒼真お兄ちゃんが面倒を見てくれるなら、私も安心だわ」

藤丸詩織は藤丸美音の小生意気な様子を見て、仕方なく呼びかけた:「美音」

藤丸美音は頭を上げて素直に藤丸詩織を見つめた。

藤丸詩織は藤丸美音の様子を見て、口まで出かかった言葉が瞬時に言えなくなり、こう変えた:「家で何かあったら、電話してね」

藤丸美音は頷いて、「うん!」

藤丸詩織と榊蒼真は急がなくていいと言ったが、彼は三分もかからずに荷物をまとめてしまった。

榊蒼真は自分のスーツケースを押しながら、藤丸詩織のスーツケースも受け取り、笑顔で言った:「お姉さん、行きましょう!」

数時間後、二人は綾部市に到着し、ホテルを見つけて荷物を置いた後、二人は椎名妙を探しに綾里村へ向かった。

藤丸詩織はナビに従って歩き続けたが、目的地に着いても周りには村らしきものは何もなかった。