藤丸詩織は少し考えてから、試すように言い出した。「私が家にいない時は、10時間ごとに報告するようにしましょうか。」
橘泉は頷いて、「いいですよ」と答えた。
藤丸詩織は橘泉の様子を見て、もう少し時間を延ばせるのではないかと感じ、少し後悔したが、呉羽真の言葉でその考えは消えていった。
呉羽真は「お嬢様、あの日私たちがこのニュースを聞いた時は、皆呆然としていました。若様たちは泣き出して、必死にお嬢様を探そうとしていました。幸い、お電話を頂いて、でなければ今頃は綾部市まで探しに行っていたところです。」
藤丸詩織は目を伏せ、静かに言った。「ごめんなさい、今回は皆さんを心配させてしまって。でも安心してください、これからは必ず自分の身を守ります。」
皆は藤丸詩織の言葉を聞いて、安心した様子だった。
橘譲は部屋にいる榊蒼真のことを思い出し、尋ねた。「榊君は地震で怪我をしたの?」
藤丸詩織は頷いて、「私を守ろうとして、背中を擦りむいてしまったの。さっきは過労で倒れてしまったの。」
橘譲は頷いて言った。「この二日間は安心して刺繍コンテストを開催してください。僕が榊君のことをしっかり看病します。」
藤丸詩織は目を細めて尋ねた。「お兄さん、どうして刺繍コンテストのことを知っているの?」
橘譲は一瞬固まり、そして顔を逸らしたまま答えず、耳だけがどんどん赤くなっていった。
橘泉は笑いを堪えきれず、「彼は君の無事を確認した後、真壁に泣きながら綾部市で何をしているのか聞いたんだ。真壁に頼み込んで、これから三ヶ月の予定まで全部聞き出したよ。」
橘泉は数秒間間を置いて、さらに付け加えた。「泣き方がすごかったよ。」
橘譲は慌てて橘泉の口を手で塞ぎ、急いで言った。「詩織、聞いて!二番目のお兄さんはその時聞かなかったけど、泣いていたんだよ。それに、彼も実は私の行動を支持していたと感じたんだ!」
橘泉は橘譲の手を強く引き離し、「妹よ、これは全部彼の推測だよ。私は…」
橘譲は腕を組んで冷たく鼻を鳴らし、「あの時のあなたの目が全てを物語っていたわ。」
藤丸詩織は橘泉と橘譲の口論を見て、思わず軽く笑い、そして言った。「私は先に刺繍コンテストの件を処理してきます。榊君のことをお願いします。何かあったら、すぐに電話してください。」
橘泉と橘譲は頷いて承諾した。