第342話 嘘を暴く

藤丸詩織は目を細め、淡々と言った。「さっき誰も若宮佳奈の作品が破壊されたとは言っていなかったはずだけど、どうしてそれを知っているの?」

そうだ、香月蛍はどうやって知ったのだろう?

皆が疑問の目で彼女を見つめた。

香月蛍は表情を硬くし、慌てて言った。「私、推測したんです。」

藤丸詩織は口角を上げて言った。「なかなか正確な推測ね。破壊されたのは確かに若宮佳奈の名前が貼られたケースだったから。」

香月蛍は目を輝かせたが、すぐに違和感を覚え、困惑して尋ねた。「どういう意味ですか?」

藤丸詩織:「昨日の夜、作品を配置する時に、あなたと若宮佳奈の作品が誤って入れ替わってしまったの。だから、破壊された作品は実はあなたのものよ。」

香月蛍は目の前が真っ暗になり、急いで自分のケースを開けた。中の刺繍作品を見た後、信じられない様子で藤丸詩織を見つめた。

突然、ある考えが浮かんだ。

香月蛍は目を赤くし、涙ながらに言った。「あなたたちは若宮佳奈を優勝させるために、わざと私の作品を醜く撮ってネットに投稿し、それがバレないように私の作品を破壊させたんでしょう!」

皆が香月蛍を見る目は、まるで馬鹿を見るかのようだった。

香月蛍は自分の世界に没頭し、周りの変化に気付かないまま、さらに続けた。「藤丸グループはなんて卑劣なんでしょう。あなたたちのやったことを世界中に暴露してやります!」

藤丸詩織は冷静に言った。「私はあなたの作品に問題がないか聞いたはずよ。そしてあなたはさっき、問題ないと答えたわ。」

香月蛍も自分の先ほどの返答を思い出し、目に動揺が走った。必死に言い訳をした。「さっきは急いで見たので気づかなかったんです。今よく見たら問題があることに気づきました。」

藤丸詩織の目が暗く沈み、スタッフに向かって言った。「彼を連れてきてください。」

香月蛍は藤丸詩織の言葉の意味が分からなかったが、次の瞬間、連れてこられた竜崎三郎を見て、瞳孔が縮み、体が微かに震えた。

藤丸詩織は淡々と言った。「藤丸グループではこのような事態を許しません。そのため、ケースが破壊されたことが分かった直後に犯人を捕まえました。香月さん、安心してください。彼から説明してもらいますから。」