343 彼はあなたが恋しかった

藤丸明彦は香月蛍の非難に、顔色を変え、不機嫌な口調で言った。「前から彼女は手ごわいって言っただろう。確かに私が人を探したけど、方法はお前が考えたんだ。お前が上手くやれなかったのに、今更私を責めても意味ないだろう?」

香月蛍は深呼吸を何度かして、心の中の怒りを抑えた。「あの女のせいで、私の大会出場資格も剥奪されたわ。これからどうすればいいの?」

藤丸明彦:「復讐する方法を一つ知ってるが、やる気があるかどうかだな」

香月蛍は考えるまでもなく即座に答えた。「やるわ!」

香月蛍は藤丸明彦の方法を聞いた後、口元に笑みを浮かべ、目を伏せて冷たく言った。「こんなことしたくなかったけど、私を怒らせた報いよ!」

香月蛍が去った後、大会会場は再び笑い声に包まれた。特に入賞できなかった人たちは、奨励賞として10万円があることを知り、皆興奮していた。

「ありがとう、お姉さま」

「お姉さまは本当に福の神様だわ!私、決めたわ。これからは毎朝起きたら、まずお姉さまにお線香を三本あげるわ!」

「あなた、大げさすぎよ。私は違うわ。私はこの一生、お姉さまのことを心に刻んで、たとえ世界中のことを忘れても、絶対にお姉さまのことは忘れないわ!」

……

藤丸詩織は無奈く首を振り、口を開いた。「皆さん、この数日間の大会、お疲れ様でした。今夜、特別にパーティーを開催して、リラックスしていただきたいと思います」

参加者たちは驚き、その後興奮して歓声を上げ、今夜何を着ていくかを口々に話し始めた。

パーティーは東京で最も豪華なホテルで開催された。

参加者だけでなく、審査員たちも全員来ていた。

「すごい、こんなに豪華なの」

「お姉さまがいなければ、私、一生こんな豪華な場所に来られなかったと思う」

「たくさん写真撮らなきゃ。人生でこんな経験ができたことの記念に」

「あれ、今入ってきた男の人誰?すごくかっこいいわ」

「この前、お姉さまと一緒にいるのを見たわ。きっと、お姉さまの追っかけじゃないかしら」

……

これらの若者たちは普段刺繍の研究に没頭していて、金融界との接点が少なかったため、桜井蓮の身分を認識できなかった。

藤丸詩織は桜井蓮を見て眉をひそめたが、すぐに視線を逸らした。