344修羅場

榊蒼真は藤丸詩織の手を握り、小声で言った。「お姉さん、心配しないで。もう大分良くなってきたと思うから」

藤丸詩織は榊蒼真の様子を見て、家に帰って休むように言おうとした言葉を飲み込み、注意を促した。「後で必ず気をつけてね。怪我に触れないようにするのよ、分かった?」

榊蒼真は頷いて、素直に答えた。「はい」

榊蒼真は自分の怪我はそれほど重くないと思っていたが、なぜか藤丸詩織は彼の怪我をとても重症だと考え、非常に心配してくれていた。

桜井蓮は藤丸詩織が榊蒼真と笑顔で話している様子を見て、表情が暗くなった。

彼はさっきホテルで高遠と提携の話をしていて、終わりかけた時に藤丸詩織の姿を見かけたので、部下たちに急いで契約書にサインさせ、藤丸詩織の個室に駆けつけたのだ。

しかし、藤丸詩織は彼を見ても、まるで透明人間のように扱い、全く気にかけてくれなかった。それなのに今、榊蒼真に対しては、まるで別人のように接している!