香月蛍は家の中を焦りながら行ったり来たりしていた。
ついに、携帯が鳴った。
彼女は目を輝かせ、急いで携帯を手に取り、竜崎三郎が事を済ませたと言うのを見て、心の底でほっと息をついた。そして、自分が専門のハッカーを雇って一位まで票を水増ししたことを確認すると、顔に笑みが浮かんだ。
香月蛍は、自分が藤丸さんへの入社を宣言され、周りの人々が羨ましそうに見つめる光景を想像していた。
藤丸さんの技術スタッフは、藤丸詩織が投票操作を可能にしたのを見て、少し困惑し、疑問に思って尋ねた:「社長、なぜこのようなことを?」
藤丸詩織は目を伏せ、口角を上げて微笑みながら、静かに言った:「希望が絶望に変わる様子は、なかなか面白いものですから」
選考会場で、司会者はネットユーザーの投票結果を表示し、笑顔で言った:「一位は香月蛍さん、二位は若宮佳奈さん、三位は羽鳥新菜さんです!」
香月蛍は得意げに顎を上げた。
しかし、コンテスト参加者たちの間で、ひそひそ話が始まった。
「一位と二位の差が5000万票もあるなんて、すごすぎじゃない?」
「香月さんと若宮さんの作品は同じくらいだと思うけど、むしろ若宮さんの方が良かったように思えるのに、どうしてこんなに差があるの?」
「票の水増しを疑っているんだけど、昨日の夜、投票を見ていたら、香月さんの票数が突然5000万票も増えたの」
……
香月蛍は人々の話を聞いて表情が硬くなったが、自分が業界トップクラスのハッカーを雇ったので発覚するはずがないと思い直すと、落ち着きを取り戻し、冷たい声で言った:「あの女が言ってたでしょう?システムは安全だって。私が票を水増しするわけないじゃない。もし噂を広めるなら、名誉毀損で訴えますよ!」
人々は心の中では疑いを持ち続けていたが、香月蛍の脅しに、もう口を開く勇気はなかった。
司会者は藤丸詩織の指示通りに、続けて言った:「では、五人の審査員による投票を行います!」
その時、作品を取りに行った係員が走って戻ってきて、「大変です!出場者の作品が破壊されています!」
司会者はすぐに落ち着きを取り戻し、「大丈夫です。ネットに公開されている作品で審査を行いましょう!」
すぐに、全員の作品が大スクリーンに表示された。