354 報告する必要なし

橘譲は一瞬固まり、我に返って静かに言った。「はじめまして、僕は橘譲です。詩織の三番目の兄です。あなたは?」

結城雛は俯いて、頬を赤らめながら小声で答えた。「はじめまして、結城雛です。詩織の親友です」

橘譲は結城雛の様子を見ながら、思わず口を開いた。「どこかで見たことがあるような気がします」

結城雛:「はい、以前よく詩織に会いに来ていました」

……

二人は言葉を交わし始めた。

藤丸詩織は呆れたように首を振った。これが恋愛特有の甘ったるさなのだろうと思いながらも、結城雛の恥ずかしそうで嬉しそうな様子を見て、彼女も嬉しくなった。

ファッションショーがまもなく始まろうとしていた。

藤丸詩織が事前に予約していた席に向かうと、隣の席には意外にも桜井蓮がいた。

藤丸詩織は眉をひそめながら尋ねた。「なぜここにいるの?」