358 本当に計算高いね

水野月奈は桜井蓮を見つめながら、心配そうに言った。「蓮お兄さん、早く医者に診てもらって、怪我してないか確認してください。」

桜井蓮は水野月奈の額の青あざと、見なくても火傷しているに違いない背中を見て、胸が締め付けられた。

彼女がこんな状態なのに、まだ自分のことを心配してくれているなんて、思いもよらなかった。

桜井蓮は優しく声を落として言った。「僕は軽い擦り傷だけだから、大したことないよ。心配しないで、ゆっくり休んで。」

水野月奈は聞き入れず、なおも主張した。「蓮お兄さん、私、心配なんです。やっぱり医者に診てもらってください。」

桜井蓮はしぶしぶ承諾した。「わかった。」

傍らにいた医者がこの光景を見て、思わず感心して言った。「若いの、君の彼女は本当に優しいね。あんな危険な場所でも逃げ出すことなく、ひたすら君を守ろうとしていたんだから。」

桜井蓮は表情を固くし、医者について行きながらも説明を忘れなかった。「彼女は僕の彼女じゃありません。」

水野月奈の瞳に暗い色が走ったが、すぐに落ち着きを取り戻した。

どうせ今回また桜井蓮の命の恩人という立場を確立できたのだから、うまく利用すれば、いずれは彼の心を開かせ、前回のように、もう一度彼女を娶りに来させることができるはずだ。

水野月奈の心の中は様々な思いが巡っていたが、表面上は寂しげな様子を見せていた。

看護師は水野月奈の様子を見て、思わず慰めの言葉をかけた。「水野さん、落ち込まないで。こんなにかわいいんだから、きっと彼も好きになってくれますよ。」

水野月奈は恥ずかしそうにうなずいた。

相良健司が駆けつけた時、桜井蓮が水野月奈の寝顔を見つめているところだった。

彼は小声で尋ねた。「桜、桜井社長、大丈夫ですか？」

桜井蓮：「大丈夫だ。」

桜井蓮は少し沈黙した後、尋ねた。「藤丸詩織は怪我していないか。」

相良健司は俯きながら、小声で答えた。「ご心配なく、藤丸さんは怪我していません。」

桜井蓮は実は既に予想していた。あれだけ多くの人が彼女を守っていたのだから、怪我するはずがない。それでも、彼は思わず尋ねてしまった。

桜井蓮は心中不快に思いながらも、強がって言った。「彼女のことを心配しているわけじゃない。ただ聞いただけだ。」