相良健司:「藤丸詩織さん、これは桜井社長が調べた資料です。すぐにお渡しするようにと言われました」
藤丸詩織は資料を受け取った。そこには3年前のクルーズ船爆発事件の疑問点に関する様々な分析が記されており、詳細な分析に加えて、対応する図も添付されていた。
藤丸詩織は資料を閉じ、口を開いた:「戻ったら、彼に感謝を伝えてください」
相良健司は急いで頷き、必ず伝えると約束した。少し躊躇した後、やはり桜井蓮のために一言添えることにした。
相良健司:「藤丸さん、桜井社長はあなたのことをとても心配していて、私が病院に着いたとたん、怪我はないかと尋ねられました。あなたが資料を欲しがっていると知ると、すぐに届けるように言われたんです」
藤丸詩織は表情を変えることなく、淡々と言った:「この資料は数日前に見つかっていたはず。急いで私に渡したかったのなら、今日受け取ることにはならなかったでしょう」
相良健司は軽く咳払いをした。藤丸詩織がそこまで知っているとは思わなかった。
傍らで聞いていた榊蒼真も、淡々とした声で尋ねた:「桜井蓮は水野月奈の看病をしながら、姉さんのことも気にかけているということですか?」
相良健司は桜井蓮のためにもう少し弁解しようと思ったが、榊蒼真の言葉を聞いて完全に言葉を失い、急いで理由をつけて立ち去った。
藤丸詩織は相良健司が去った後、再び資料に目を向けた。
榊蒼真は唇を引き締め、尋ねた:「姉さん、何か分かりましたか?」
藤丸詩織は頷き、数秒後に答えた:「全ての手がかりが一つの場所を指し示しているわ——雲雀島よ。この島に行って調べる必要がありそうね」
榊蒼真は藤丸詩織の服の裾を引っ張り、素直に尋ねた:「姉さん、僕も一緒に行っていいですか?」
藤丸詩織は榊蒼真の瞳を見つめ、頷いて答えた:「いいわよ」
橘譲は階下に降りた時、ちょうど藤丸詩織と榊蒼真の会話を耳にし、急いで近寄って言った:「詩織、僕も一緒に行くよ。君たちの安全を守るためにね」
藤丸詩織は異議なく、頷いて承諾した。
その後の数日間、藤丸詩織は雲雀島に行く時間を作るため、仕事に追われていた。
一方、桜井蓮はこの数日間、ずっと病院で水野月奈の看病を続けていた。
水野月奈は仕事中の桜井蓮を輝く目で見つめ、桜井家に嫁ぐ日が一歩近づいたように感じていた。