相良健司は話をしている藤丸詩織を見かけると、目を輝かせて彼女の側に駆け寄って尋ねた。「藤丸さん、桜井社長はあなたを訪ねて来ませんでしたか?」
藤丸詩織:「いいえ」
相良健司は希望が消え、顔色が一瞬で青ざめた。「桜井社長はきっと何か事故に遭ったんです!」
藤丸詩織は相良健司の様子を見て、思いやりを持って言った。「桜井社長は他の場所にいるかもしれませんよ。もう少し探してみたら?」
相良健司は首を振った。「さっき一周探しましたが、姿が見当たりませんでした。それに、彼があなたの側にいないということは、何か事故に遭ったに違いありません!」
相良健司は桜井蓮がさっき必ず藤丸詩織を探しに行ったはずだと確信していた。外で見つからないということは、まだ建物の中にいるということしか考えられなかった。
相良健司がそう考えた時、藤丸詩織も同じことを思い、建物の方を振り向いて言った。「桜井社長はあそこにいます」
桜井蓮の顔には煙と埃が付着し、この時頭がぼんやりとしていた。担架に乗せられた水野月奈に目を向けながら、医者に繰り返し言った。「早く彼女を助けてください、早く」
医者は急いで安心させるように言った。「ご安心ください。先ほど初期診察を行いましたが、彼女は重傷を負っているものの、生命の危険はありません。早期治療さえ行えば大丈夫です」
桜井蓮はほっと息をつき、救急車に同乗した。
彼は藤丸詩織と、その後ろにいる榊蒼真と神崎湊を一瞥した後、振り返ることもなく医者に言った。「先生、早く病院に行きましょう。後で必ず最高の治療をお願いします!」
藤丸詩織は救急車を見つめ、車が見えなくなるまで見送った後、相良健司に尋ねた。「担架の人は水野月奈さんですか?」
相良健司は唇を動かし、目を閉じて答えた。「はい」
相良健司は今や水野月奈にうんざりしていた。桜井蓮がやっと自分が藤丸詩織を好きだと理解したというのに、彼女がまた邪魔をしに来たのだ。
相良健司は桜井蓮の弁護をするように話し始めた。「桜井社長は優しい人なので、水野さんを見かけて助けただけです。誤解しないでください」
藤丸詩織はさりげなくうなずき、言った。「誤解なんてしていません。病院に行って桜井さんを探してあげてください」
相良健司はそれを聞いてようやく立ち去った。