347 誰も指示していない

桜井蓮は口に出かけた言葉を飲み込み、藤丸詩織を睨みつけながら、歯を食いしばって言った。「いいぞ、いいぞ、藤丸詩織。まさか彼の味方をするとはな!」

藤丸詩織は桜井蓮の態度が理解できなかった。榊蒼真は自分の会社の人間なのだから、彼を助けるのは当然だ。元夫である彼を助けるわけがないだろう。

藤丸詩織は再び桜井蓮に退去を促した。「用がないなら帰ってください」

桜井蓮は冷たい声で言った。「刺繍の協力について話し合いに来たんです」

藤丸詩織:「申し訳ありませんが、今は休養中です。仕事の話は復帰してからにしましょう」

わずか数分で、桜井蓮は立て続けに断られ、面目を失って病室から大股で出て行った。

榊蒼真は藤丸詩織を見つめ、唇を噛みながら、しばらく躊躇った後で小声で言った。「お姉さん、桜井蓮の言葉が気にならないんですか?」