361 海に落ちる

藤丸詩織は飴を受け取り、口の中に広がる甘い水蜜桃の味を感じながら、胸の中の苦しさが少し和らいだ。彼女は榊蒼真を見上げて、軽く微笑んだ。

桜井蓮はちょうど藤丸詩織の笑顔を目にして、心の底から不快感を覚えた。

橘譲はこの光景を見て、むしろ満足げだった。榊蒼真のことはあまり気に入らなかったが、詩織をいじめていた桜井蓮に対抗できるなら、それで十分だった。

雲雀島はその名の通り小さな島で、船で渡る必要があった。

藤丸詩織は海面を見た途端、目が揺らぎ、顔色が徐々に蒼白くなっていった。

数年が経過していても、記憶の中の光景は依然として鮮明で、まるで昨日のことのようだった。

桜井蓮は藤丸詩織の様子を見て、彼女が過去のことを思い出したのだと察し、慰めようと前に進み出た。

しかし桜井蓮が近づく前に、榊蒼真はすでに藤丸詩織と話をして、彼女を笑わせていた。