帝都ホテル。
橘譲は目の前に生きている榊詩門を見て信じられない様子で、興奮して彼を抱きしめた。「兄弟、お前生きていたんだな。あの客船事故で亡くなったと思っていたのに……」
橘譲は目が赤くなり、涙が光っていた。最後の言葉は詰まってしまった。
藤丸詩織は橘譲の様子を見て、笑いながら言った。「三兄さん、悲しまないで。榊詩門は今元気じゃないですか?」
橘譲は何度もうなずき、「そうだな」と呟いた。
食事の時になってようやく、自分が見落としていたことを思い出した。彼は頭を上げて藤丸詩織に尋ねた。「詩織、お前、榊詩門が生きているって知ってたんじゃないのか?否定しなくていい、絶対知ってたはずだ!」
藤丸詩織は軽く咳をして、顔を横に向けた。「私もあなたより数日早く知っただけですよ。」
榊詩門はうなずいて、優しく言った。「その通りです。主に私が悪かったんです。帰国後すぐに皆さんに連絡しなくて。」
橘譲は「まあいいよ、今回は許してやる。だって俺たちは兄弟だからな。でも、次にこんなことがあったら、怒るからな。」
榊詩門は静かに「はい」と答えた。
藤丸詩織は榊蒼真がご飯を食べているのを見て、取り箸で彼におかずを取ってあげた。「おかずも食べて、ご飯と一緒の方が美味しいよ。」
榊蒼真は顔を上げて、笑顔で「はい」と答えた。
彼は兄が戻ってきたら、きっと藤丸詩織と一緒になって、自分は部外者になるだろうと思っていた。でも今も気にかけてもらえているから、今は満足すべきで、これ以上望むべきではないと思った。
橘譲は藤丸詩織の行動を見て、瞳の奥に深い意味が閃いた。藤丸詩織の榊蒼真に対する態度が単純なものではないと感じた。
しかし、榊詩門は兄弟だが、妹の気持ちの方が大事だと思い、それ以上考えないことにした。
榊詩門は橘譲に向かって尋ねた。「橘礼は?」
橘譲は説明した。「二兄は二日後にチャリティーパーティーに参加するんだ。多くのメディアが来るから、マネージャーに連れて行かれて服を選んでいる。すぐには戻れないんだ。」
藤丸詩織は「チャリティーパーティー?」と聞いた。
橘譲はうなずいて、「ああ、そうだ。そういえばこのパーティーは申し込めば参加できるんだ。時間ある?時間があれば、私たちも行って盛り上がれるよ。」