藤丸詩織は首を傾げた。「トレンド入り?」
彼女が目を落としてタブレットを見ると、一組の写真が映っていた。写真には彼女と榊詩門が写っていたが、撮影角度の関係で横顔しか写っていなかった。
写真を投稿した人はこう書いていた:今日たまたま広告撮影現場の前を通りかかったら、最近人気が出てきた神崎湊がいたので、こっそり写真を撮ろうと思ったんだけど、横にいたスタッフに目を奪われて、思わず写真を撮ってしまいました。
ネットユーザーたちは写真を見て、次々とコメントを寄せていた。
「え、今のスタッフの採用基準ってこんなに高いの?」
「この二人、お似合いだと思う!」
「横顔だけでもすごく素敵な二人だってわかる。特に男性が女性を見つめる眼差しがすごく優しくて、女性も優しく男性を見返していて、二人の間の雰囲気の良さが伝わってくる」
……
こうしてネットユーザーたちの熱い議論の中で、この写真はあっという間にトレンド入りし、さらにトップ3にまで上り詰めた。
藤丸詩織は呆れて首を振った。現代のネットユーザーの思考回路が理解できなかった。あの時は単に髪を直していただけで、優しい眼差しなんて言われても困る。
真壁誠が尋ねた。「桜井社長、このトレンドを削除しましょうか?」
藤丸詩織はタブレットを手に取って暫く見つめた後、首を振った。「いいわ。みんな私と榊詩門をスタッフだと思っているし、削除したら余計な憶測を呼ぶだけよ。それに、このトレンドは神崎湊にとってはむしろプラスになるわ」
真壁誠は首を傾げた。「神崎湊にとってプラスですか?」
藤丸詩織は頷いた。「この写真をきっかけに神崎湊を知って、バラエティ番組を見に行く人が増えているわ。彼の影響力が広がっているのよ」
真壁誠はタブレットを手に取って確認してみると、確かにその通りだった。
彼は心の中で感心した。藤丸詩織の洞察力がこれほど鋭いからこそ、藤丸さんを急速に発展させることができたのだろう。
トレンドの影響力は大きく、わざわざ見に行かなくてもシステムが自動的に通知してくるほどだった。
相良健司は写真を見て、思わず身を震わせた。
桜井蓮がこのトレンドを見たら、全身から冷気を放つ様子が目に浮かんだ。急いで病室に向かい、桜井蓮がスマートフォンやタブレットを見ることを阻止しようとした。